紀伊山地 大峯奥駈道 金剛界ノ巻
奈良吉野山と熊野三山を結ぶ修験道の修行場として、1300年前に役行者によって開かれた道
大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)
国内最古の縦走路であり、いにしえより歩かれてきた大峯山
太古の風景と、1300年前より続く修験道の道で
人はどれだけ心の機微に触れることができるだろうか?
まだ紅葉には早く、人もまばらな吉野の山里
古の英傑らが躍動したこの地より始まる大峯奥駈道
修験の道は、すなわち歴史の道でもある
青根ヶ峰から四寸岩山、大天井岳へ
峰をひとつ越えるたびに、近づく大峯の真髄
そして出合う大峰の大峯たる由縁(五番関)
従是女人結界
臨ム兵 闘フ者 皆 陣ハリ 列ツクリテ 前ニ在リ
10/26
吉野 8:10~ 青根ヶ峰 11:10 ~ 四寸岩山 13:00 ~ 大天井ヶ岳 15:30 ~ 五番関16:25 (幕営)
やさしい陽光に包まれる大峯の朝
登山者の多い洞川からの道と合流すると、眼前に聳えるは山上ヶ岳
このあたりは、ことさら宗教色の濃い場所である
表行場の核心である大鐘掛岩
奥駈道を志すのなら、この行場を避けては通れない!
西ノ覗からはこれまで歩いてきた峰々が一望できる
吉野は遠くなった
山上ヶ岳の山頂直下には宿坊や一大道場の大峯山寺がある
大峯講のシーズンはさぞかし賑わうことだろう
お花畑と呼ばれる笹原でこれから目指す高みを遠望
稜線にはガスが沸き立ち始め、天気は下り坂のよう・・・
大峯山寺より一段上がったところにある聖域「湧出岩」
この場所こそが山上ヶ岳の最高点
一等三角点まで置かれているのだが、ここを訪れる人は意外にも少ない
山上ヶ岳を下り、小笹ノ宿で喉をうるおす
ここは水の乏しい大峯稜線上の貴重なオアシス
この先阿弥陀ヶ森から大普賢岳へと
大峯は深山の域に入っていく
岩尾根や岩壁に周囲を固められた大普賢岳~七曜岳付近
晴れていれば絶景が楽しめるはずなのだが・・・
とはいえ岩場の登下降やへつりなど
修験の道を存分に味わった
行者還岳まで歩を進め、行者還ノ宿で一夜を過ごす
オン サンマヤ サトバン
10/27
五番関 5:45 ~ 洞辻茶屋 7:25 ~ 山上ヶ岳 9:15 ~ 阿弥陀ヶ森 11:10 ~ 大普賢岳 12:30 ~
行者還岳 15:10 ~ 行者還ノ宿 15:55
3日目は予報通りの風雨となり、さっさと停滞を決める
そして迎えた4日目、吹きすさぶ烈風と濃霧につつまれる大峯
やはり修験の道、そうやすやすと行かせてはくれない
しかし厳しさの中に身をおいてこそ、見えてくるものがある
それこそが修験
「験を修む」ということなのか?
大峯の屋根ともいえる八経ヶ岳を越え
大峯はいよいよ核心へと
連なりが露わになっていく奥駈の峰々
原始の自然と、霊域を思わせる静寂な空気の漂う場所
この大峯の山脈そのものを、かの役行者は曼荼羅になぞらえたという
確かに
そこにあるのは悟りの世界
眼前に浮かび上がる顕著な三角錐
その姿はまさしく、釈尊の名をいただく山に違いない
そのピラミダルに近づくほどに
穏やかであった道はか細くなり、険しさを増していく
それは金剛界の終焉を意味する
両部分けの岩場
修験では、吉野からここまでを金剛界曼荼羅とみなし
これより熊野までを胎蔵界曼荼羅とみなしている
金剛界から
いよいよ胎蔵界へ
いかようにして人は
知性から理性に導かれていくのであろうか?
大峰奥駈道 胎蔵界ノ巻につづく